時々雷が閃いている空は、灰色の曇りに覆われており、そのせいで少し寒くなっている。強く吹いている風は一人の若者しかいない公園の数々の木から落ちた金色の枯葉を飛ばし、すごくきれいな景色を作ってくれている。
公園の一番大きな木の下に座っている若者は服の全部が黒。髪の色ですら黒いこの黒ずくめの若者は目の色だけが緑だ。はたはたと翻っている黒いマフラーをつけているこの男は座りながら、雷の閃く空を眺めていた。
「もう秋が終わるところだなぁ。」
こういった彼は数秒後に大声であくびをした。上の枝にとまっていた数羽のカラスがカーカーと飛び出していった。
「お前らも逃げるのか…」
飛んで去っているカラスを見た彼の緑の目には少し悲しみの痕跡がある。カラスたちは百メートル先にある木の枝に泊まった。
ふんぞり返っている若者はため息をついた。
「鳥たちよ、俺もお前らのように自由になれるかなぁ。」
こういってもう一度ため息をついたら、腹の虫が鳴いた。
「はらへったなぁ。何か食べよっか。」
上半身を上げて、そのまま少しどこで何を食べようかと考えた後、立ち上がって着ている黒いコートについた葉を振り払った。立っている彼の姿は結構かっこよかった。耳を隠すくらいの長さの髪は真っ黒で、強く吹いている風のおかげでマフラーと同じようになびきていた。
彼はそのままもう一度空を見た。
「もうそろそろ仕事見つからないとな。仕事探しってこんなに難しいとは思わなかったんだ。」
帰るため振り返ったら、そこでじっとして、彼のほうに見ている男に気が付いた。
男は少し生意気っぽい微笑みが顔に浮かんでいた。若者が彼のほうを見たら、会釈した。
「こんにちは、風早涼太さん。」
若者は止まり、自分の名前を呼んできたこの男を冷静に見た。しかしどう見ても怪しいこの男を見覚えがない。この赤の他人に名前で呼ばれることは気に入らなかったんだ。
「私ですが、どこかで出会ったことがありますか。」
「いいえ、ありません。そして風早さんは我々のことを知らないと思います。」
我々… 涼太は回りを見渡したが、誰もいなかった。手をこーとのポケットに入れて男のほうへ歩いた。止まったら、男との距離は二メートルくらいになっている。
「で、そっちのほうは自己紹介をするつもりがないんですか。せめてどうして私の名前を知っているかを教えてもらいたのですが。」
涼太は彼の灰色の目を正視しながら、冷静に聞いた。髪もマフラーもコートも風になびきている涼太はなんか威厳のあるオーラを放っているようなかっこいい姿をしていた。
「私は山田一井と申します。風早さんに断れないと思う提案があります。」
「提案?何の提案でしょうか。」
男は少し空を眺めた後、もう一度涼太のほうに見た。
「風早さん、人生がつまらないと思ったことがありますか。そしてこんなつまらない人生を後にして、新たな人生を始めたいとよく思っていますか。」
涼太は今まで通りに彼を冷静に見ているが、心の中では少しびっくりしたんだ。初めて出会ったはずのこの人は、なぜこんな突然で興味深い質問をしただろう。でも一番怪しいのはその質問ではなく、なぜこの男は心の中にある退屈の気持ちをはっきり見抜いたことだった。
「仮にその判断は正確だとしましょう。しかしなぜ赤の他人のあなたが私の退屈に興味があるかはさっぱりわかりません。説明をしてくれるのでしょうか。」
「我々はあなたのように能力の高い人を探しています。そして風早さんが潜在能力の高い人だとは我々の意見です。潜在能力だけではなくて、正確や物の見方、色々な個性は最も興味深いものです。」
涼太はこの話がますますわけのわからないようになっているという感じがする。それでも冷静さを失わずに続けた。でも丁寧語をやめたことにした。
「俺は計算機工学部から卒業したただのソフトウェアエンジニアだ。山田さんが思っているように得意能力や面白い性格などがないんだよ。むしろ結構つまらない人だから友達も一人ですらいない。こんなつまらない人には山田さんの探している何かがないと思う。」
山田は笑った。
「そんなことないですよ。むしろ今風早さんと直接に話したことであなたが我々の探している人だと決め込みましたよ。」
「いったいどうやって?」
「まずはその冷静さですよ。赤の他人の私とこんなおかしな話をしてもその冷静さを一秒たりとも失わなかったことは興味深いところですよ。」
「俺はほとんどびっくりしないタイプだから、そんな大げさにする必要がないだろう。」
「いいえ、それは重要な個性です。そしてあなたのような人には最もふさわしい個性です。」
「俺のような人ってどういう意味だ。」
涼太は自分のことを自分よりもよく知っていそうな真似をするこの男との会話については少し違和感があった。
「そのままの意味ですよ。」
涼太はこの何の役にも立たない返事を聞いたら何も言わずに山田の顔を見続けた。
「最初に聞いた質問に戻りましょうか。風早さん、人生がつまらないと思ったことがありますか。そしてこんなつまらない人生を後にして、新たな人生を始めたいとよく思っていますか。」
涼太はこの質問を答えないと話が進めない感じがする。
「その通りだ。今の人生はあまり楽しくない。何をやっても満足できない。振り替えたら後悔ばかりだ。人生に二度目のチャンスがあったら、また同じ行動をとるのか、また同じミスをするのかはよくよく考えたんだ。」
「考えた後には何かの結論に至ることが出来ましたか。もしできたら、達したことを教えてくれますか。」
涼太は微笑んでいる男の顔を見やめて、空を仰いだ。雷の回数が増えているような気がする。
「達したのは絶望だった。経った時間はもう戻れない。今までとってきた行動の影響は消えてはしない。後悔も悲しみも、今まで起こってしまった何もかも、そしてこれから起こることは全部、俺の人生の一部として死ぬまで俺に同行するんだって…」
「もし、過去を変えるチャンスや能力があったら、どんな行動をとると思いますか。」
涼太はまた山田の顔を見た。そして冷静な笑顔で答えた。
「そんなチャンスをくれることができる者もいないし、能力も存在しないから、その質問の答えを考える必要もないだろう。」